→この問題を経営陣にエスカレーションする。
プロジェクトの重要性についての機能部門マネジャーの認識を変えるにはこの方法がもっとも効果的です。結果としてプロジェクトに当該メンバーを戻してもらえる可能性が高まります。
その他の選択肢は効果的とは言えません。プロジェクトの重要性をチームに伝えても機能部門マネジャーとの問題解決にはなりません。機能部門マネジャーにプロジェクト憲章を読んでもらっても、プロジェクトの優先順位をはっきりさせる効果はあるかもしれませんが、相手の行動が変わるとは思えません。担当プロジェクトの増員を要求する必要はあるかもしれませんが、その前に機能部門マネジャーとの問題に対処する必要があります。プロジェクト・マネジャーは、この問題を経営陣にエスカレーションすることで、当該メンバーが自身のプロジェクト・タスクの完了に必要なサポートを得られるように後押しできます。
理由
① 背景:マトリックス型組織ではPMの権限は限定的
問題文にあるように、**機能部門マネジャー(Functional Manager)が
プロジェクト・メンバーを別の業務にアサインしてしまった、というのは、
まさに典型的なマトリックス型組織の権限衝突(Authority Conflict)**です。
マトリックス型組織では:
- 機能部門マネジャー → メンバーの人事・技術・リソース管理権限を持つ
- プロジェクト・マネジャー → プロジェクト成果・スケジュール・予算の責任を持つ
つまり、PMは人員配置や優先順位を直接指示できる立場ではないため、
このような対立はPMの権限範囲を超えているのです。
したがって、PMが独断で解決しようとするのではなく、
上位マネジメント(経営層やPMOなど)にエスカレーションして調整を仰ぐのが正しい対応になります。
② プロジェクト憲章を使っても効果がない場合
前回あなたが想定されたように、プロジェクト憲章は
「プロジェクトの正式承認」と「PMの権限範囲」を示す文書です。
ただし、それは経営層からPMへ権限を委譲した証拠であり、
PM自身が憲章を“交渉材料として提示する”ことはできますが、
最終的に判断できるのはスポンサーや経営層です。
今回の状況では、機能マネジャーがすでに「プロジェクトの優先度は低い」と判断しており、
PMが憲章を読ませるだけでは、対立の解消には至らない可能性が高い。
このため、スポンサーまたは上層部の介入が必要とされるのです。
③ PMP的な原則:PMは「権限の範囲内で最善を尽くし、超えた場合は適切にエスカレーションする」
PMBOK第7版では、「システム思考(Systems Thinking)」と「ガバナンス(Governance)」の観点から、
PMは自分の責任範囲を超える課題(特に組織構造に起因するもの)については、
適切に上層部へエスカレーションすることが求められます。
PMP試験では、
“Escalate appropriately rather than attempting to force control beyond your authority.”
(自分の権限を超えて無理にコントロールしようとするのではなく、適切にエスカレーションすべき)
という考え方が、繰り返し問われます。
❌ 他の選択肢が誤りである理由
「このプロジェクトの重要性をチームに伝える。」
→ チームは悪くありません。問題の当事者は機能部門マネジャーです。
チームに伝えても人員が戻ってくるわけではありません。
「機能部門マネジャーにプロジェクト憲章を読んでもらう。」
→ 憲章を読ませるのは第一歩の説明手段としては有効ですが、
PMが権限を持たない限り、FMの判断を覆すことはできません。
したがって、「最初に試す行動」ではあっても、最終的な解決策としては不十分。
「担当プロジェクトの増員を要求する。」
→ これは対症療法的で、**根本原因(権限・優先度の不一致)**を解決していません。
同様の問題がまた起きる可能性があります。
💡 ワンポイントアドバイス
PMP試験で「エスカレーション」という言葉が正解になるパターンは、以下のようなときです:
- PMの権限を超える問題である(人事・組織・契約など)
- 交渉・説得を試みても解決しない
- 組織レベルの方針や資源配分の調整が必要
つまり、「エスカレーション=無責任」ではなく、
**“適切なレベルで問題を解決する責任ある行動”**です。
✅ まとめ
- 正解:この問題を経営陣にエスカレーションする。
- 理由:マトリックス型組織ではPMの権限が限られており、上層部の調整が必要。
- 誤答理由:他の選択肢はいずれもPMの権限を超える・根本解決にならない。
- アドバイス:PMPでは「自分の権限内で最善を尽くす → 超えたらエスカレーション」の順を守るのが鉄則。
フルレングス試験2 (日本語) 17

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